『24フレームの映画学 映像表現を解体する』を読んだ
2022 - 8 - 10
わたしは映画を見てこなかった。だからこういった手取り足取り初歩から映像を論じてくれるのはありがたい。そうはいっても、映画の「箸の持ち方」から述べるのではなく、「おいしいワインの選び方」くらいにはなっている。
わたしは映画を見てこなかった。どれくらいかといえば、いつもひとめでわかりやすい「最新CG映像技術」だとか派手な「メディアアート」だとかを好んだ"ふり"をしてむしろ軽蔑していたほどなのだ。(たちが悪いのは、CGもメディアアートも結局は真面目に見ておらず、表層をみて面白がる単なるサブカル野郎になっていた。)
その点で、この書は真剣に映画の見方を教えてくれる。ミディアムショットやロングショットあるいはパンなどのカメラの撮影方法による視覚効果、構図に表現的に配置されるミザンセンあるいは水平・垂直線の効用、切り返しショットや長回し、アクションつなぎなどのモンタージュ・編集の効果、それらに伴う「映画の視線」、アニメーションにおけるコマ数の違いによる表現とその効果などなどまるで語り切れない。
これらはある意味で、当たり前である。最新のスペクタクルなCG表現と比較して考えれば陳腐でさえあるかもしれない。だが当たり前で陳腐であるから無視していたものでもある。無視すべきではなかったのだ。全くわたしは映画を見てこなかった。
ひとつ嬉しいのは、古典期の映画から21世紀のアニメーション、そして現代のポスト・メディア的な映像状況に関しての論考まであって、こういう意味でも刺激的で楽しく拝読することが出来た。
まだこれを通して一読したのみであるから、これからこの書に引用されている映画や、参考文献などもこれからじっくりと参照して、いわばカタログのようにして学んでいきたい。
カタログのようにして読んでしまうのは、きっとドゥルーズに怒られてしまうかな。でもわたしは映画を見てこなかったのです。どうか許してくださいますよう。
あなたから 夕焼けの赤 何ぞ問われ ふと気づく、そを 見ておらざりきかし